仙台防災枠組ってなに?さくっとわかりやすく解説

条約・枠組

仙台防災枠組とは?

仙台防災枠組とは、第3回国連防災世界会議で取り決められた決まり事で、2005年(平成17年)の第2回会議(兵庫)で採択された「兵庫行動枠組」の後継となるものです。正式には「仙台防災枠組2015-2030」といい、東日本大震災の経験と教訓が取り入れられており、2030年までの国際的な防災の取り組み指針として、世界各国でこれに基づいた取り組みが行われています

仙台防災枠組には、復興過程における「より良い復興(Build Back Better)」等の新しい考え方が示されたほか、これからの防災・減災の推進に向けては女性や若者のリーダーシップ、市民社会や学術機関、企業やメディア等の多様な主体(マルチステークホルダー)が参画し、連携することの重要性などが明記されています。

仙台防災枠組の内容を要約すると次の4つのポイントとなります。

  • 兵庫行動枠組の振り返りと今後の課題点
  • 期待する成果とアプローチ
  • 7つの明確な目標
  • 4つの優先分野と対応

兵庫行動枠組を反省と、それを踏まえたこれから2030年までの大まかな行動方針を示しているのが特徴です。それぞれ説明していきます。

兵庫行動枠組の振り返りと今後の課題点

兵庫行動枠組とは、2005年に阪神淡路大震災の被災地である神戸市で開かれた第2回国連防災世界会議で、2005年から2015年までの災害に対する国際的な行動指針を示したものです。
兵庫行動枠組について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

兵庫行動枠組を振り返って、仙台防災枠組では次のように述べられています。

  • 兵庫行動枠組は災害リスク削減のための取組における重要な指針を提供してきており、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた進展に寄与してきた。
  • 一方で、実施面では、潜在的なリスク要因への対処、ゴールと優先行動の設定、あらゆるレベルでの強靭性を向上する必要性、十分な実施手段の確保において、多くのギャップが顕在化している。
  • これらのギャップは、政府や関連するステークホルダーが支えあい、補完しあう方法で取り組むことができ、また管理すべき災害リスクの特定に役立ち、強靭性向上のための投資を誘導する、行動指向型の枠組みを開発する必要性を示している。
https://www.bousai.go.jp/kokusai/kaigi03/pdf/10sendai_kariyaku.pdf

つまり、兵庫行動枠組に基づいて各国が防災・減災に取り組んだことによって、国や地方や住民それぞれが防災について意識するようになり、防災行動が促進できたが、この枠組みでは、一人ひとりが具体的にどのような取り組みをすればいいのかや、国や地方自治体やボランティアがどのように互い連携していくかなどが具体的に定義されていなかったり、災害のリスクを正確に把握できなかったりしたことで、依然として多くの経済的損失が発生してしまうことになった、ということです。

それらを踏まえ仙台防災枠組では、「これから2030年まで防災にどのように取り組んでいくか」に対する基本的な考え方が大きく4つのポイントでまとまられています。

災害リスクの計画的な削減

ASCCII.jpデジタル用語辞典によると、災害リスクとは、「大規模災害などに対する予防対策、あるいは発生時の緊急措置体制が整備されていないことにより損失を被るリスク」のことです。ここでいう災害とは、「自然又は人為的なハザード、関連する環境、技術、生物学的なハザード及びリスクによってもたらされる、小規模・大規模、頻発・希発、突発・遅発の全ての災害」のことを指します。
考えうる災害リスクを計画的に削減し、かつ新たな災害リスクの創出を防止すること、そしてそれによって国土の強靭化を高めることが非常に重要です。

起こりうる災害リスクの抑止・防止

人口爆発や各国の工業化により、温暖化や都市環境悪化、生態系の悪化など、さまざまな問題が引き起こされています。また、2019年に始まった新型コロナウイルスによる世界的パンデミックでは、日本でも大きなダメージを受けることとなりました。

このように、「今は発生していなくても将来的に起こりうる災害リスクに対して抑止策・防止策を図る」ことが、国や地域、あるいはグローバルなレベルで必要であり、万が一災害が発生したときには二度と同じ災害が起こらないように、復旧・復興段階でよりよい社会インフラあるいは制度を構築していくという「Build Back Better(よりよい復興)」の考えに基づいた復興を行っていくことになります。

「人中心」の予防的アプローチを

兵庫行動枠組では、災害がおこった時に直接的に被害を受ける人々(ステークホルダー)が、政策や計画・基準の立案やその実施に関わることが少なく、ステークホルダーが災害リスクを自発的に対策していく意識が十分に芽生えませんでした。

仙台防災枠組では、ステークホルダーを積極的に防災・減災のための政策・計画の立案・実施に関与させていくことで、災害リスクに対する自発的な行動を促すようにしています。

国際的協力

災害リスクに対する強靭性は、先進国と発展途上国で大きく異なっています。各国の行動とそれぞれの能力を補完するため、国家間や各国と国際機関ででの情報共有や国際協力をさらに向上していくことで、世界全体で災害に対する強靭力(災害レジリエンス)を高めていくことが大切となってきます。

 

期待する成果とアプローチ

仙台防災枠組では、今後2030年までに期待する成果として次のように掲げています。

人命・暮らし・健康と、個人・企業・コミュニティ・国の経済的・物理的・社会的・文化的・環境的資産に対する災害リスク及び損失を大幅に削減する

https://www.bousai.go.jp/kokusai/kaigi03/pdf/10sendai_kariyaku.pdf

そして、その成果を実現するために、経済,ハード及びソフト,法律,社会,健康,文化,教育,環境,技術,政治など、さまざまな側面からのアプローチによって災害リスクを削減・防止していくことにしました。

たとえば実際に教育の現場では、実際に被災した人から話を聞いたり、調べ学習を通して学校や通学路など身近な場所で起こりうる自然災害(土砂崩れ等)を考えたり、あるいは修学旅行で東日本大震災の被災地を訪問するなどが行われています。(参考:文部科学省 「生きる力」を育む防災教育の展開 PDF)

4つの優先分野と対応

兵庫行動枠組を通して、2015年から2030年にかけて、4つの優先分野と対応が具体的に設定されました。

  1. 災害リスクを理解する
  2. 災害リスク管理を強化する
  3. 強靭化に向けた防災への投資
  4. 効果的な災害対応への備えの向上と、復旧・復興過程における「よりよい復興(Build Back Better)」

優先行動1:災害リスクを理解する

災害リスクを防止・削減していくためには、まず当事者が「災害リスク」について十分に理解していくことが必要不可欠です。

災害リスクについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

災害リスクの理解のためのポイントとして、日本では特に

  • 関連データの収集・分析・管理・活用
  • 災害が複合的に発生する可能性を含めた災害リスク評価
  • 地理情報空間の活用、防災教育、普及活動、サプライチェーン

の3つの促進を図っています。

これらを通して災害リスクにはどのようなものがあるのか、特に身の回りにどのような災害リスクが潜んでいるのかを一人ひとりが十分に理解し、そして周りの人と情報を共有することが災害リスクの削減につながります。

優先行動2:災害リスク管理を強化する

災害リスク管理を強化することも大切です。津波や地震やパンデミックなどの災害は、めったに起こるものではないので日ごろから常に意識して防災や減災のための取組をしていく必要があります。家庭や学校、あるいは地域の自治体や政府が一体となって災害リスク管理を行い、またそれぞれの責任と権限を明確にしていくことで、リスク管理の連携・強化を図っていきます。

優先行動3:強靭化に向けた防災への投資

強靭化(レジリエンス)とは土木用語で、「災害がおこった時に被災を最小限に抑えられる”強さ”と、すぐに復旧・復興できる”しなやかさ”を兼ね備えた地域または社会」のことを言います。ソフト・ハード施策への投資を通して災害への対策を講じていくことが大切です。

例えばハード施策では、造ってから何十年も時間がたっているインフラ設備(橋や道路など)を新しいものに取り換えたり、メンテナンスの頻度や精度を高めたりするなどがあります。

またソフト施策では、学校や自治体の集まりなどで、自分の地域がどのような災害に弱いかを話し合う機会を設けるなどして防災教育を推進したり、災害がおこった際にすぐに救援・協力できるような協力体制を整えておくことで、「災害に強いまちづくり」を行っていったりするなどがあります。

優先行動4:効果的な災害対応への備えの向上と、復旧・復興過程における「よりよい復興(Build Back Better)」

過去の災害対応での失敗や成功体験からの学びや、今日の最新の情報技術を取り入れて、より効果的な災害対応への備えに更新していくことも大切です。

例えば、京都大学の防災研究所の巨大災害研究センターでは、ユーザーの個別の避難行動と、当該地域で想定される津波浸水状況の時間変化を、同じスマートフォンの画面で同時に動画として可視化する「逃げトレ」というアプリを制作し、地域の防災に役立てている。

このアプリを開発を主導した京都大学の矢守教授は次のように言います。

「元々、避難訓練とは大勢で足並みを揃えてやるもので、1人ではなかなかやらないですよね。でも、だからこそマニュアルどおりの避難訓練を行っていて本当に人の命が救えるのかを考えないといけないという大きな背景がありました。このアプリは、どんな情報を届けると人は逃げるのか、避難訓練をどのようにデザインすればよいのか、ということを考えて作ったものです」

https://www.thats.pr.kyoto-u.ac.jp/2019/03/28/6750/

従来の避難訓練は、集団で行うものであり、一人ひとりが実際の災害を意識した訓練に十分なっているとは言えませんでした。

今ではほどんど全員が持っているスパートフォンのアプリを使うことで、一人一人に焦点を当てた避難訓練というものができるようになりました。

また、復旧・復興時に、今回の災害の経験を活かしたより災害に強いまちづくりを行うこと(Build Back Better)も、災害リスクの防止・軽減のために重要となってきます。

7つの明確な目標

仙台防災枠組では、7つのグローバルターゲットを設定して、この枠組を通して2030年までに達成する具体的な目標を次のように定めています。

  1. 2030年までに地球規模での災害死者数を実質的に減らす。2005年から2015年までと比べ、2020年から2030年には10万人当たりの死者の減少を目指す。
  2. 2030年までに地球規模での災害による被害を受ける人々の数を減らす。2005年から2015年までと比べて、2020年から2030年には10万人当たりの被害者数の減少を目指す。
  3. 2030年までに地球規模でのGDP(国内総生産)に関連し、災害を直接の原因とする経済的損失を減らす。
  4. 2030年までに、保健や教育施設など重要なインフラへ損害や基本的サービスの破壊を、レジリエンス(回復力・強靭性)の開発を通じて、実質的に減らす。
  5. 2020年までに国レベルおよび地方自治体レベルにおいて、災害リスク軽減戦略を策定する国を実質的に増やす。
  6. 2030年までに本枠組の実施に向けた国レベルの活動を補完するために、発展途上国への十分で持続可能な支援を通じた国際協力を実質的に強化する。
  7. 2030年までに人々による多様な災害への早期警戒システムと災害リスク情報および評価の入手やアクセスを実質的に増やす。

この7つのターゲットに照らし合わせて、目標にどれだけ近づいたかを定期的に調査・発表していくことで、世界全体で同じ目標を達成できるようにしています。
2023年5月18日~19日にニューヨークの国連本部で開催された「仙台防災枠組実施状況の中間評価にかかる国連ハイレベル会合」では、郡仙台市長が参加し、仙台市の防災の取組みや独自に実施した「仙台防災枠組」の中間評価等について発表を行いました。
(参考:仙台市 仙台防災枠組実施状況の中間評価にかかる国連ハイレベル会合)

まとめ

いかがだったでしょうか。仙台防災枠組は2030年まで採択された国際的な枠組みであり、防災・減災に向けた包括的な取り決めがなされてきました。
本稿がみなさんの防災・減災のために役に立てることを願っています。

参考文献:
仙台防災枠組2015-2030(仮訳)| 外務省(PDF)
UNDRR 仙台防災枠組

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